山をのぼる人を身近にするwebメディア やまポトレ

福島 磐梯山

東北の名峰で、山のいろいろな表情を知る。

山は多様性の宝庫だ。

季節、天候、時間、標高、植生、地質。
同じ山だとしても、これらの変化によって、様々な景色を見せてくれる。

早秋の磐梯山。日本百名山にも選ばれた東北の名峰は、登山者たちにどんな景色を見せてくれるのだろうか。

2017.09.13
kota

今回山に登るのは、元山岳部から初心者まで経験にバラツキのあるパーティー。

磐梯山へは、初心者でも登りやすい八方台登山口から登ることになった。

しばらくは、樹林帯を進むことになる。

今日のために、登山道具一式を揃えたメンバーは、特に楽しそうに道を歩いていた。

森を抜けると、開けた場所に出る。微かに硫黄の香りがする。

ここはどうやら、「中の湯」という温泉の跡地らしい。今では廃屋になっているが、ここに温泉が張っていたかと思うと、何とも惜しくなる。

その奥にそびえる磐梯山は、雲に隠れていた。

中の湯跡を過ぎると、木道が続く。そのあとは、徐々に傾斜が強くなってくる。

今日が初めての登山のメンバーに「今日はなんで登ろうと思ったの?」と聞いてみた。すると、「新しいことを始めたかったから」「嫌な出来事があったから、清算したい」そんな答えが返ってくる。

山に登る理由は人それぞれ。それぞれの思いを胸に、若者たちは黙々と山道を登っていく。

一行は、温泉跡地から見えた磐梯山を覆っていた雲の中に入っていく。

山頂からの景色は大丈夫だろうか?

初心者のメンバーに良い景色を見せたい経験者組は、ドギマギしながら歩みを進める。

だが、ガスの中でさせえも、初心者のメンバーにとっては新鮮な体験のようだ。

山小屋に到着。ここまで来れば、山頂まではもう少しだ。

雲が晴れるのを待つことも兼ねて、少しだけ休憩を取る。

相変わらずガスは晴れないようだった。

これ以上待っても仕方がない。とにかく山頂を目指そう。

一行は再出発するが、予想通り山頂は白の世界だった。

山頂から見えるという猪苗代湖はどこにあるのだろうか。

下界が一切見えず、風も吹き荒れる磐梯山の山頂。たまらず風を避けて建物の近くに移動する。

「まぁこういう時もあるよね」と、笑いあっていたが、やはりどこか元気がない印象を受けた。

「とりあえず、ご飯を食べよう」

元気がないときは、腹を満たすに限る。カップ麺やおにぎりなど、各々準備したランチをザックから取り出し、山ごはんタイム。

なんとなく、グループの元気が戻ってきた。

すると、風が止み、暖かさを感じられるようになった。

「みずうみ!」

誰かが叫ぶ。

みなが食事をしている真正面に、広大な猪苗代湖が現れる。

「そこにあったのか」と苦笑いをしながらも、突然の絶景に興奮を隠せない。

いつの間にか、空には美しいブルーが広がっていた。この瞬間、みなのモヤモヤも一気に晴れたに違いない。

新しいことを始めたいと言っていたメンバーはこれを見てどう思っただろうか。

嫌なことがあったという彼女は、この景色や体験を何かしらの糧にできたのだろうか。

そんなことを考えてもみたが、みなの顔は、シンプルに楽しそうだった。

猪苗代湖の逆側は、裏磐梯と呼ばれる領域。

磐梯山が火山であることを物語る荒々しい景色が見える。土色にそびえ立つのは、櫛ヶ岳だ。

壮大な自然のドラマを見せてくれたこの山ともそろそろお別れ。

一行は十分に山頂を堪能し、名残惜しくも下山を開始する。

すると、今回のパーティーのリーダー、ごめくんが下山ルートにサプライズを用意してくれていた。

お花畑と呼ばれる、草原エリアだ。

季節によってその名の通りたくさんの花が咲くという。

膝に負担がかからない緩やかな道を、時折磐梯山を振り返りながら、一行はご機嫌に歩いていった。

自然は、人間には決してコントロールできない存在だ。

だからこそ、自然が良い表情をしてくれたとき、人はつい感謝をする。「ありがとう」と言いたくなる。もっと言えば、世界が自分を肯定してくれたかのような気持ちにもなる。

真っ白な世界を見せられたが故に、絶景が広がった瞬間、みなの中にも込み上げるものがあっただろう。こんなご褒美を一度でも味わうと、きっとまた山に登りたくなる。

山が見せる様々な表情は、まさに山の醍醐味。

今回、様々な思いで登山に臨んだ初心者メンバーが、この表情の変化を楽しんでくれていたのなら嬉しい限りだ。

その他の
MOUNTAIN REPORT

REPORT TOPへ