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福岡 平尾台

晩秋のすすきに揺れる、羊たちの背中を追って。

「異世界のようだった」

平尾台を訪れた人は、口を揃えてこう表現する。

黄金に輝くすすきと、カルスト台地独特の美しさが織りなす景勝地を、ゆっくりと歩いた。

2019.01.07
koma

今回一緒に登った人たち

福岡県北九州市に位置する平尾台は、日本三大カルストのひとつに数えられる。長い歴史が生み出したこの山の、晩秋の色づきを求めて、ゆったりと登っていく。

吹上駐車場をスタートして少し進むと、登山道の両側には一面のすすきが迎えてくれた。

春に野焼きがなされ、夏には新緑が広がるという平尾台だが、秋は黄金色に輝くすすきが見頃らしい。

正面には、白い岩がぽつぽつと。

羊群原(ようぐんばる)とはよく言ったもので、地表に現れる岩が、確かに羊の背中のように見える。


高校時代は山岳部として色々な山を登ったが、石灰岩がこんなに露出した道は初めての経験だった。

地表に露出した石灰岩のことをピナクルというらしい。表面は結晶化していて神秘的に見えた。


ファインダーの向こうでは、たくさんの羊が群れて遊んでいるよう。

「ニュージランドは、人よりも羊が多い」と、かつての旅仲間が言っていたことをなんとなく思い出す。


今回の目的地は大平山。ここまでの道のりは、ハイカーにとても優しい。ゆったりと登っても、あっという間に山頂だ。

この日は平日ということもあり、山頂は貸し切り。晩秋の絶景を、じっくりと味わうことができた。

山でいただくものには、旬のものをなるべく取り入れたい。既成品も便利だけれど、その季節を感じながらの食事も良い。

今回は、秋冬に美味しいみかんを持参。裸で持って来て、皮を剥いて、口に放る。この手軽さがいい。

山頂の尾根沿いにもピナクルは広がっていた。ちびっこハイカーたちには、かくれんぼ岩と親しまれているとか。

岩の隙間からの生命の芽吹きに、自然の優しさと強さを感じる。

途中、道が大きく凹んでいた。

ドリーネと呼ばれる地形だ。長い年月をかけて石灰岩が水に溶けることで地表が陥没し、このような姿になる。

想像もつかないような太古の昔からこの場所はあり、その道をいま、歩かせてもらっているのだ。


静かな風にすすきが揺れる。

“秋の野のおしなべたるをかしさはすすきこそあれ”

そういえば、清少納言も揺れるすすきの美しさを詠っていた。

平安時代から続く日本の情緒をしみじみと感じながら、ゆっくりと進む。もうすぐ、今回の山行は終わりを迎える。


名もない絶景が、山にはたくさんある。

1枚シャッターを切ってみると、羊がちょこっと顔を出していた。

「また来るよ」と心の中で声をかけ、平尾台に別れを告げた。

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